洋書がまったく読めない翻訳家

私が真剣に翻訳の勉強を始めたのは、23歳のとき。

大学院で文芸翻訳を専攻してからだった。

当時の課題に、洋書を1冊読んで、書評を書くというものがあった。

当然、私も本を1冊選び、早速読み始めたのだが、私は愕然とした。

何を言っているのか、まるでわからないのだ。

「おかしいな、選んだ本が悪かったのかな?」と思い、試しに他の洋書も買ってみたが、どれも似たりよったり……

そう、さっぱりわかないのだ。

私は目の前が真っ暗になった。さて、これから翻訳家になろうと意気揚々とスタートを切ったつもりが、洋書1冊もまともに読めないのだから。

辞書を片手に、たった数ページを読むのにも苦戦し、すでに10ページを超えるあたりで、私は早くも力尽きてしまった。

TOEICも学校教育も意味がない!?

当時の私の英語レベルはどのくらいだったのだろうか。

ざっくり言えば、早稲田大学の入試に受かった程度の文法と単語力、あとTOEICのスコアも900点以上はあった。

自分では英語が得意だと思っていた。

だけど、そのとき私は気付いたのだった。

確かに受験やテスト英語には強いのかもしれない……

でも、実生活で使われている英語に、この知識は何も役に立たないのかもしれない。

そして、今、私は自信を持って言える。

学校で習う英語は、まったくもって使い物にならないと。

でも、安心してほしい。

今の私は洋書を問題なく読めているし、適切なトレーニングをすれば、ちょっとした英文くらいはスラスラ読めるようになる。

今回はそのためのトレーニング法をお伝えしようと思う。

多読で総合的なリーディング力を上げよう!

洋書がまったく読めないことに絶望した私だが、次に実践したことは、とにかく洋書を読みまくることだった。

そして、いちいち辞書を引いていると時間がかかるから、辞書を引くことをやめた。

当然、内容はほとんど理解できない。頭にも入ってこない。苦痛でしかなかった。

でも、修行だと思って、とにかく、1冊を読み通すことをひたすらに続けた。

1冊を読み終わるのに、時間はかかるし、読み終わっても、内容はわからない。

でも、ひたすらに、これを繰り返した。

すると不思議なことに、回数を重ねるごとに、わかるフレーズだけをつなげて、あらすじが何となくつかめるようになってきた。

「拾い読み」や「わからない言葉を推測」する感覚が何となくつかめてきたのだ。

はじめた頃は主人公が男か女か、何のストーリーなのかもわからなかったのに、そのうちに半分くらいは理解できるようになり、80%くらいならわかるようになって……といったふうにだ。

30冊も読めば、拾い読みで、そこそこあらすじはつかめるようになる。

コツは、あまりに長いと挫折してしまうので、短めの本を選ぶことだ。

そして分からなくても、とにかく読み進める。

この際には「100%理解しよう」としないこと。なんとなくわかればいいや、くらいで十分だ。

英会話もそうだが、「完璧」を求めると1か0(all or nothing)思考になってしまい、結局、何もできなくなってしまう。

60%くらいわかれば、本を読むことはそれなりに楽しめる。

あらすじの雰囲気を楽しむくらいの余裕があれば完璧だ。

読み終えたらノートをつけて、わかったこと、自分なりに推測したあらすじを記していくようにする。

後から見返すと、だんだんとノートに書けることが増えていったり、精度が上がっていったりするのを感じられる。

思うに、英語が読めないという人は、英文を読むことに単に慣れていないだけなのだ。圧倒的に英文に触れる量が足りないのだ。

学校の教科書に出てくる文章は、自分の知っている単語と文法で書かれているし、お手本的なきれいな文章だ。

だが、巷にあふれているのは、それほど親切ではなく、お手本のような文章で書かれたものばかりではない。

よくわからない言い回しや、スラングや、書き手の癖などが大いに盛り込まれたもののほうが圧倒的に多い。

ただ、あまりにもボキャブラリーが少ない場合は、いつまで経っても理解度が上がらないので、明らかにボキャブラリーが足りないと思われる場合には、単語帳を1冊くらいは買って暗記したほうがいい。

あるいは、キンドルの「wordwise」(辞書機能)を使えば、辞書を引かなくても、自分のレベルに合わせて、単語の意味が自動的に出てくるので、多読の際には、ぜひキンドルは活用してみてほしい。

精読で読解力を上げよう!

ただ、これだけでは、単語力もアップしないし、いつまでたっても読解力は上がらない。

そこで重要になってくるのが「精読」である。

私の場合は「翻訳」の勉強が精読の訓練になった。

1文1文を吟味して、文法書や辞書を引きながら、単語のニュアンスまで吟味して日本語に移し替えるのが翻訳であるため、非常に良い訓練であった。

また、私は学生時代に家庭教師のアルバイトをしていたのだが、問題をやみくもに解かせるよりも、精読と音読をきちんとさせたほうが、文法や単語の定着力が上がり、総合的な英語力がアップするのを実際に目の当たりにした(音読については、また別の機会に書きます!)

分量は短くて構わないので、とにかく1ワードずつ丁寧に読むこと。

この「at」はどういうニュアンスなのだろう? などと細かい部分まできちんと考え抜くことが重要だ。

分量は多くなくても大丈夫。私の場合は毎日400ワードを丁寧に訳すということを日課にしていた。

このように多読と精読を繰り返しているうちに、気がつくと、難なく英文を読めている瞬間が必ず訪れる。

楽しんで続けられるなら、素材は英字新聞でも、マンガでも、ゲームでも、ドラマのスクリプトでも何でもいいと思う。

たくさん読む、じっくり丁寧に読む、このメリハリをぜひとも意識してみてほしい。

多読は体力作り、精読は定着させる作業

ハッキリ言ってしまえば、語学なんて慣れと経験値だ。だけど、慣れるまでがとにかくつらい。

ある程度、多読に慣れてくると英語を読む基礎体力のようなものが鍛えられるので、とにかくその段階に行くまでに、いかに挫折しないかということが大事である。

だから、肝心なことは、どれだけ楽しんで学べるかだと思う。

ネット上では、簡単に映画のスクリプトを入手できるし、Kindle Unlimitedに加入すれば、月額980円でたくさんの洋書が読める。

面白くないと思えば、別の本に変更すればいいだけの話で、とにかく「楽しく続ける」ことを目標にしてみてほしい。

私のオススメは漫画である。

最後に英語で読めるオススメの漫画を紹介するので、これから洋書にトライしてみたいという人は、まず導入として、ぜひ購入を検討してみてほしい。

マンガで楽しく英語を読もう!

ドラえもん
いくつになってもドラえもんは面白い!
あらためて読むなら、英語版に挑戦してみるのはどうでしょうか?

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